2024年11月15日金曜日

イントルーダー 

 前は自分で考えたフライなんて釣れたもんじゃなかった。工夫を加えるほどに酷くなる。だからマテリアル含め可能な限りコピーするのがスタイルだった。

それでも自分だけのフライというのが欲しい。よく釣る人や、カッコの良いのを見つけては自分なりにアレンジする。作るほどにフライボックスにはゴミが溜まる。それでも、1級ポイントを前にして、オリジナルを結ぶことはなかった。どうしても魚が欲しかったから。釣れる気がしないオリジナル。

転機になったのは小さなトラウト向けのイントルーダーを結んだとき。動画でみて、マテリアルに多少のアレンジを加えて自分なりに解釈したもの。たまたま結んだそのフライで、その川で始めてLサイズのニジマスを釣ることができた。



なんで釣れたのか分からない。ただ、川の中で足元に流したとき、透けた小魚のように見えたのが印象に残った。


それまでの自分は出来上がった写真の表面をなぞったり、マテリアルや大きさだけが気になっていたかも。ふと気になって実際に水の中ではどうなるのかを考えるようになった。例えばエルクヘアカディスなんて、どう見てもカディスには見えない。でも水面に浮かべて下から見上げた水面の凹み具合なんて、羽を広げたゴミ虫や蛾、何となく虫類全体の浮き方に近く感じる。なぜそのマテリアルを選択するのかが大事ではないか。

マラブーはどうだろう。テールを目一杯長くして泳がせたら、ボディに巻いた重りで上下に振れるとき、それはもう驚くぐらいクネクネとした虫とも小魚とも言えない動きをする。この揺らぎはよくできたゾンカーを泳がせたときにもできる。



スカジットシステムと同時期に広まったイントルーダーは、日本ではトレーラーフックのついたフライの総称のようだった。定義も何もあやふやだったから、マテリアルやパターンなんてカオスそのもの。何となくカッコの良い感じを目指すのだけれども中々釣り場では手が出ない。たまによく釣れると聞いたが、あれだけ巻いたのに釣れることはあまりなかった。大きく、派手なフライは侵略者のごとくマスの本能を刺激する、なんて聞いていたりした。冬のやる気無いマスの鼻面を泳がせて口を使わせる。ヘビーなティップで底スレスレにゆっくりとただよわせる。冬から春に向けたウィンタースチールヘッドのためのフライ。サイズは全長15cmを超えたりする。そんなフライを初夏に虫が出ているときに流してもなかなか難しいだろう。



そのうちチューブフライに巻いてみたり、ゾンカーテープを使ったダーティーホーがでてきたり、トラウト向けに小さくアレンジしたのが出てきたり。日本以外でも相当なアレンジが進んでいるのが動画を中心に確認される。



では基本のルールって何?と聞かれると、そんなものはない。釣れた魚が答えだろう。それでも自分なりの拠り所となるポイントがいくつか固まってきた。

1つは透明感。イントルーダー系を巻く人は皆ショルダーにこだわる。ショルダーにオーストリッチなんか乗せると、傘のように開いて、光に透かしたシルエットをみると内側が透けた小魚のボディに見えなくもない。

もう一つはマテリアルの揺らぎ。ショルダーに支えられたオーストリッチは本流の中で本当によく揺らぐ。ゾンカーテープやマラブーだって上手く取り付ければ絡まずによく揺らぐ。これが魚を誘う。泳がせつつ止まった瞬間にホワっと広がり揺らっとクネる。そんなのが理想かな。

あとは色の組み合わせ。アメマスにはチャートリュースとはいうものの、オリーブだって悪くない。ただ、単色よりは組み合わせのほうがアピール力が高い気がする。川底の石や水色、その日の天気から見て判断することも多い。これからはグレーオリーブの他に明るいピンクや白を積極的に試してみたい。


すでに自分が巻いてるのはイントルーダーなのかダーティーホーなのか分からない。トラウトイントルーダーらしきサイズ一般を称して、「自分だけ釣れるフライ」と言っている。

こんなことに注意をしながらフライを巻くと、現地で結びたくなるフライができる。まるで餌が付いているかのごとくマスが飛びかかってきたりするとたまらない。やはりフライタイイングも魚釣りの一部であり、どうやったら釣れるのかを思案しながら作るのが一番楽しい。

2024年10月24日木曜日

秋の本流

 久しぶりの本流。前日の雨で笹濁りと思ったが、朝一流している間に水が増え、濁りもきつくなる。それでもと岸際を丁寧に流すと、黒のロングテイルイントルーダーに小さい鮭がかかった。これで切り上げて大きく移動。



移動は正解だった。さらに水が減った止水での釣りを楽しむことができた。車中泊で朝は寒くてグズグズしていたら、暗いうちから釣りをしていた人より、すでに何匹も釣れたと聞いた。次の機会があれば早起きしよう。ただ、工事の重機が相当入っていた。来年にはまた風景が変わってしまうのだろう。


その翌週。減水した同じランを足元にきをつけながら丁寧に、オリーブのゾンカーイントルーダーで、釣り下る。偶然にも岸際の岩盤の深みでリトリーブ中に重みを感じられた。秋の貴重な一匹。



あちこち回るも思うようには魚と出会えない。ただ、あまり風もなく、軽いラインで少しだけ思うようなキャストができた。オレンジのイントルーダーを小さなアメマスが咥えてくれて、満足感とともにその日を終えられた。


次の日は別のラインを試してみる。ところが、全くラインが伸びない。右手からの向かい風だ。軽いラインは軽快に釣れる反面、風にはとことん弱いことを再認識した。

一歩進んでニ歩下がる。魚だけではない。短い秋の釣りが名残惜しい週末。

2024年9月17日火曜日

バンブーロッド、スペイロッドのフェルールに関する考察

 スペイロッドを竹竿で作るとき、1番困ったのはフェルール。ニッケルシルバーが定番だが、スペイロッドに合うサイズがなかなか売られていない。売られていてもとても高価なもの。スペイロッドを竹で作るには、フェルールを旋盤で自作するしかないのだろうか?ここから試行錯誤が始まった。

 比較的安価なものとして、最初は真鍮パイプだった。決して悪いものではないが、なんとなくしっくりこない。また、金属との接合部分で折れやすいようだ。



 次はカーボンパイプ。これは中々良かった。ただ、直径の単位が1ミリ単位なのもあり、ブランクを大きく削らないとならず、そのときにできる段差からポキポキ折れる。初期のロッドを友人に試してもらったら、ほぼフェルール周りにトラブルが出る。スペイキャストの捻じれと負荷に耐えられないようだ。また、擦り合わせが難しく、きつくするとブランクからフェルールごと外れてしまうことも。色々補強しながら悩む毎日。



段差が問題ならと、貼り合わせのバンブーフェルールはどうだろうか。これにカーボンファイバーチューブを被せて補強、エポキシで固める。意外なほどに簡単に制作でき、中々のフィット感と強度がある。貼り合わせのトラブルでフェルール自体が折れてしまったことはあるが、ブランク自体は段差をつけないので折れることはない。やり直せば良いこと。ただしフィッティングが難しい。もっと精度の高いフェルール加工ができればよいのだろうが、振り回したときにどうにもフェルールの鳴きが気になる。ついフェルールが長く、太くなってしまう。また、使用中、使用後で微妙にフィッティングが変わる。バンブーという素材の吸湿が鳴きのもとなのだろうか。それでも、もっと精度の高い加工ができて技術的に詰められればバンブーフェルールに課題解決の可能性を感じる。



ここでコンポジットフェルールを試してみた。Bob Clayが紹介していたもので、元のアイデアはTed Barnhartのユニバーサルフェルールにある。これは実際の竿の形状に合わせてカーボンファイバーからフェルールを成形したもの。ブランクの接合にあたって接合部分を削って段差にすることもない。これが素晴らしく良い。スムースさ、強度、フィッティング、スペイキャストへの耐性、考えられる課題を高い次元で解決できる。


左がバンブーフェルール、真ん中がコンポジットフェルール、右がコンポジットのオス部。

自分としてはこれが現在バンブー素材のスペイロッドに一番向いたフェルールと考えている。それでもBobはこのフェルールはドライライン向けとしている。やはり負荷のかかるスカジットラインや重いシンクティップには、スプライスドジョイントを勧めているようだ。スプライスドジョイントの接合性能は抜群だけれども意外なほどに人気が無い。不思議。



まだまだ試行錯誤が続く。悩んだ分だけ、課題の解決が見えたときに達成感も大きい。これら一つ一つが自分のスタイルとなることだろう。バンブースペイのテストと竿作りは続く。


夏の終わり

 今年のカラフトマスは2回とも振られてしまった。



しかし、釣行前週での日帰り、1回目カラフトマス遠征の天気を見ての朝釣行、2回目カラフトマス遠征を1日で切り上げての転進釣行、いずれも良い魚と出会うことができた。

いずれもマラブー黒、2xロングの6番か8番。長いテールでも絡みづらくしてあるので、安心してリトリーブできる。あまり光ったフライには反応が薄かった。

最近、あらためてロールキャスト、ジャンプロールを練習している。スイープの仕方、アンカーの位置、前方への竿先の軌跡など、何度やっても課題が残る。たまにグンと前方に伸びるラインは快感である。何度も繰り返してしまう。



湖底からのガス泡なのか、マスのライズなのか。魚がいると思われる方向へキャスト、期待を持って短めのリトリーブ、間にインターバルをもうけてマスの反応する時間をつくる。

バックハンドでのストロークも練習する。タイミングと竿の軌跡を間違わなければどうにか。スルスルとラインが伸びて、右側から投げ入れられない位置にフライが届いたときに、数回のリトリーブでフッキングした。手前にダッシュしたかと思えば大きく2度ほどジャンプした。サイズからは信じられないファイトはニジマスならではだろう。


元の場所で見つけた沖目のライズの少し手前にフライがおちた。着水して数回のリトリーブで魚が乗った。重量感がズシリとつたわる。この沖目でのヒットが本流でのスイング中の当たりに近く、ドキリとさせる。トルクのあるゆったりとした動きで岸に寄ったかと思えば、急に右斜に走り出す。待ってましたとばかりにリールが悲鳴をあげる。竿は立てずにジャンプさせない。テンションもかけすぎない。少しばかり時間をかけすぎたかもと心配になるが、ソコソコの疲れが見え始めたところで顔を水面から上げさせられた。





何が良かったのか。急に朝の気温が下がったところから昼前に温度が上がって虫が動き始めたからか。期待していたイブニングはイマイチ。残暑残る中で昼間から釣れることが貴重に感じた夏休み。

11ft6inch #67

skgit short 350gr

INT tip 10ft

2024年8月26日月曜日

釣りと妄想

 二十年以上通っている山上湖がある。ダム湖なので水位の変動もあれば、土砂の堆積でポイントが潰れてしまうことも。特に最近は溜まった土砂を重機で掘り起こすだけでなく、周囲の林まで切り倒していたので、全く雰囲気が変わってしまったのが残念だった。今年の様子はどうだろうか。


過去ルアーを始めた頃。小さな魚のライズが湖面いっぱいに広がるなか、スプーンに食いついてくれる心優しいニジマス、は、いなかった。ただ巻くだけではダメ、アクションをつけてみてもカウントダウンを色々試してもダメ。なにより単にできることを一つずつ潰すだけでは面白くない。できることはルアーチェンジぐらいだろうか。ふと、気持ちを切り替えてみた。

この小さめのスプーンをヒラヒラ泳がすと、傷ついた小魚が湖面を彷徨うように見えないか。派手なリアクションよりも小魚をイメージするアクション。優しく、かつ表層を、岸に向かって逃げるように。こんなことを妄想しても、やってることにはには大差はない。それでもこのスプーンを見つけた大きなニジマスは後を追いかけて丸呑みする、といいなと妄想しながら釣りをする、いや、本当に丸呑みした!

妄想キャストをして、数投目にとつぜん竿が曲がって首を振り出した。相当でかい。初めての大物にパニックになる。いじったことがないドラグを緩める。ラインは小物を想定して4ポンドなのを思い出す。魚は悠々と潜水艦のように横へ動き出したと思ったら、急激に沖に走り出した。トルクにスピードが加わり細いラインは水圧で、ことも無く切れた。その場にへたり込む自分。切れたあとに大きくジャンプした魚が見えた。間違いなくレインボー。悔しさしかない記憶の中では60アップだった。


釣りをするときには、単純にできることを1から試すことが多い。もちろん、それで釣れるパターンやフライが見つかることもあるが、釣ろうとしている魚や捕食シーンを妄想すると途端にリアリティが増す。

真夏の暑い1日の中、なるべく冷たい水が集まるところ。わずかな流れに逆らうように、虫なのか、魚なのかよくわからないサイズのフライで誘いをかける。浅い湖底一面にびっしり濃い色の藻が生えているので、黒のフライが良いはず。川や底の色とのバランスが大事で、下手に目立つとスレた鱒は見向きもしない。その川に合った色というのはこういうところにあるのだろう。沈めるよりもストラクチャー周りをせめやすいインターティップで。この湖にいる小魚を想定して小刻みなリトリーブを心がける。すると程なく小振りなニジマスがかかった。


場所を変えてインレット側に向かう。すでに日は高く、周りも釣れている雰囲気がない。深く掘られたところに立ってライン合わせをやっていた。スカジット350grip、ティップはクリアインターで100grぐらいだろうか。スレたカラフトマスに嫌がられず、風にも負けないシステムを検討しながらロングキャストを試していた。追い風でも横風でもいける。かけらばかりの期待をもちつつ、黒のマラブーをループノットで結んだ。アクションが大きくなるので根掛かりが増える気がするけれど、この深さでインターティップなので大丈夫だろう。

キャスト練習しながら手前でアクションを見ると、オタマジャクシのようにヒラヒラ泳ぐ。ベイトというか、自分が魚だったら耐えられないマラブー特有の動きがいい。これを回遊している鱒が見つけたらつい咥えるかもね。なんて妄想する。

風に乗せながら遠目にキャスト。練習なので長めのファストリトリーブ、もうそろそろ帰ろうかと言うときに突然魚が掛かった。期待していなかったけれど、いい魚に出会いたかったのもあり、とても嬉しい一匹出会った。


釣れた要因はなんだろう。岸際でライズをする鱒には見切られる、しかしロングキャストで遠目を狙えば、回遊する魚には有効かも。ちょっと投げる角度を沖目にして、さらにラインをのばしてみたら、驚いたことにまた魚がかかった。今度のほうが首振り具合から魚体が大きい。手前に来たとき、練習だからとネットがないことに気づく。透明な水の中に頭の大きなオスのニジマスを確認できた。なんとか顔を上げさせたいが下に突っ込んで顔を上げない。つい雑に力をかけたせいか、足元でバラしてしまった。ただ、妄想しながら反復したように魚が掛かったことが嬉しかった。


350gr スカジットショートF

RIOtip INT10ft


帰りの車中でYouTubeをみてたら、キャプチュードの山口さんが同じようなことを語っていた。自分なんかよりもっと深く鋭い洞察で釣りをしている人の話は面白い。妄想している人は釣れる、と言っていたのが印象的だった。

残念でもニヤけながらまた釣りに行きたくなる帰り道。




2024年8月2日金曜日

Bamboospey 曲げ伸ばし

 真竹よりもトンキンのほうが癖が少ない。トンキンは固いが節回りの癖もパターンがある。

最初は曲げ伸ばしをヒートガンでやっていた。これが一番効率がよい。焦げ付きもない。ただし電気代が非常に気になる。竿1本作るのに6時間稼働とかはさすがにヒートガンにも負荷が高いだろう。

アルコールランプは一箇所を集中して熱すると焦げる。かと言って熱する時間が少ないと曲がらない。上手く分散させながら曲がりやすくなるポイントまで温めるイメージ。少しだけコツを掴むとどうにか使い物になるようになった。

長さを揃えた竹を曲げ伸ばし、側面や節回りも整えてまっすぐにする。

しかしすぐに暴れだす。

表面をフレーミングしながら再度曲げ直しする。

落ち着いたと思ったらまた暴れ出す。

表面の段差を微調整しながらなおす。

丁寧にそろえないと、いざ削るときに節回りで不整合が生じる。ミリングマシンやプレーニングフォームはそんなに器用な道具ではないことを経験した。

やれることはなんでも何度でも修正して直しながら工程をすすめる。


これを3peace×6本、さらに品質安定のために2本分を一度にやるので36本やる。
かくして曲がった竹を見ると直したくてウズウズする曲げ伸ばしマニアとなった頃に終了する。

これでようやく表皮を削れる。

2024年7月22日月曜日

ヒゲナガ狂騒曲

 北海道の本流、夏にかけてのキーワードはヒゲナガにある。捕食のスイッチがヒゲナガにロックオンされるとカゲロウパターンや小さめのニンフどころかストリーマーやイントルーダーだって見向きもされなくなる。フライサイズもウェットフック6番以下にまで小さくなっていった。



今年はヒゲナガに向き合う十勝だった。黒で釣れたり、小さめのウェットであたるのだが、すべてヒゲナガをキーワードにすると読み解ける気がする。



今週も向かうのか。一人でも行くつもりだったが、熊を考えたら絶対に2人以上。お声がけいただいたのもあり、ご一緒させていただく。前日に慌てて2本だけフライを巻きたした。



川の流れ、コンディションは賭けかもしれない。この間全然雨が降っていないし、かと思えば夜には雨。想定外のコンディションの中、ヒゲナガのハッチとライズが始まった。



ライズが多いことはチャンスかと思いきや、実は意外なほどに釣れない。手を変え品を変えとなることが多い。日頃本流で砂粒を拾うような釣りをしていると、狙い撃つような釣りはなかなか難しいもの。それでもようやく反応があった。やっぱり意識はヒゲナガか。

11'6" bamboospey
375gFH 
INT10ft

車に紛れんでしまったヒゲナガを観察すると、上からみた斑模様は一部であり、ボディのグレーオリーブと中間にある白い複羽が鍵となる。ここから抽象的な捕食スイッチを拾い上げられたらいいのだけれど。


そろそろこの地でのヒゲナガも終わりを迎える.少しでもヒゲナガの釣りを理解できたのだろうか。


また来年にこの続きを楽しめますように。