2024年4月24日水曜日

湿原のマッチ・ザ・ベイト

 潮が引き始めた水溜まりに目を凝らすと、鮭稚魚サイズの茶色い小魚が目に入る。ピンピンと跳ね回る様子に気を引かれる。 友人たちから、ゾンカーが良いとかオリーブが良いとか聞いた週末の帰り道。78cmを捉えたというフライはオリーブシルバー。サイズも色合いも跳ね回る小魚に似ていたのが印象的だった。
 川の流れに立ち込み、もう少しさきにと進んでいく。干潮はもう一歩をふみこませる。そしてある一点から浅くなり、膝上ぐらいとなる。そこは鳥たちの捕食場でもある。釣れないわけではない。浅瀬に流し込んだときにも反応があった。 
 自分たちは遠くは深いと思っている。もっと深みを求めて遠くにキャストしている。もっと前にでる。でも、キャストの先は思ったよりも浅い。そこに大型がつく。するとこの浅瀬にアメマスがクルージングして浅瀬の小魚を狙っているのではないだろうか。 このあたりだとインターでも底をするし、カレイもよくかかるのは納得。
 少し上流に向かうと急に深くなってタイプ1/2でも軽く感じられるぐらい。そして深いからと言って魚が溜まっているというわけでもない。干潮にあわせて少し上に群れが移動してくる様子はあったが。 3回の週末で、魚が極端に溜まるの場所が一箇所だけあることがわかった。その中でのアタリフライを考える。

 先週までのヒットフライやその要素から仮説を立ててフライをまく。一番の期待はゾンカーだった。しかし釣れない。一週間前の小魚たちが消えたのか?それとも浅瀬に群がる鳥たちが狙うのは白魚になったのか?白系のみポツポツあたりがある。

 1週目はチャートリュース、2週目はオリーブ、3週目は白系?隣で入れ食いとなっているフライマンのフライを盗み見ると、細長い白いフライだった。自分の中での答えが見つからないままフライをローテーションする。こういうときは誰も使わないだろうフライを流してみるのはどうか。すると思った通りに反応があった。

 魚は人間と同じ色彩認識はしないだろう。そして水中からみあげたシルエットや光の透過具合、ユラメキなど総合して反応しているのでは?イントルーダーのような威嚇するようなフライをして縄張り意識での
反応、という人もいるだろうけれど、自分は魚を誘惑する要素が多いことや小魚にも見えるように思う。フライサイズだけ見てもミノープラグや、ベイトとなる小魚サイズより極端な差はない。
 マッチ・ザ・ベイトを考えながら、抽象と具象のあいだを行きつ戻りつフライ巻き貯める。そして現場での直感と妄想。数が釣れなくとも、これがはまるとたまらない。充実の1日となった。

2024年4月16日火曜日

凪の中

思っていたよりも早く着く。まだ満潮なのだろう。下流への流れは止まっているはず。
着いたときには霧の中だった。 朝もやを風が吹き飛ばすこともない。トロンとした流れが霧の中を進む。これから干潮に向かうとき。流れが少しずつ進んでいく。上流からの岸際の蘆や枝葉が塊となり流れていく。 流れに立ち込み杭となった自分にまとわりつくのを振り払いつつもキャストを続ける。 対岸に投げて馴染んだあたりでアクションを加えつつ。流しきってからリアクションを誘う。 それでも流す位置を考え、どこであたりを狙うか。 今回はタイプ12のアトランティックサーモンショート350gr風が無ければ抜群のターンオーバー、早い流れにもしっかりとなじむ。
奇をてらってパープルのフライ。しっかりと咥えてくれたのは嬉しい限り。 昨年苦戦したバンブーロッドは、今年はしっかりとツールとして活躍してくれた。
干潮でも水位が低いせいか逆流はなかった。 珍しく60サイズのアメマスラッシュに出会えたこと。心から感謝。そして満足しきってない自分は今週も向かうこととする。

2024年4月7日日曜日

風の中

 微風の中ゆったりと流れる水面に、ポワーンとライズ、たまに食いあげるようなモジリ。1年間夢見ていた風景がそのまま広がっているのを見て、今日はもらった、と確信する。

このフィールドに、ふたたび立つことができたことに心から感謝する。


シーズンオフに巻きためたフライ。何色が良いのだろう。明るい天気ならチャートリュースがいいのだろうか。シーズン初期のまだすれていないときには特に有効だろう。想像の中で巻き上げたフライにはまだまだ自信が持てない。


妄想にあったフライを現実のものとする。最初に結んだ大きめのフライで、1キャスト1ヒットとなった。こういう釣りがしたかったんだと、興奮しながら釣り続ける。なんだか自分だけのヒットフライを見つけた気分だ。これで今年の一軍フライとなった。


太い体、大きな尾びれ。遠投してたるみをとったあと、スイング中にガツンとひったくるのもあれば、小刻みな早めのリトリーブを追いかける様に反応する魚もいる。ラインが流れに入り込み、流れの重さを感じられるところの反応がよい。



二日目は竿が立てられなくなるぐらいの風の中。だんだんと強くなる風の中、7Mぐらいの風。それでもフォローの風向きを利用したキャストで十分釣りになった。420grと、重めのスカジットラインが良かったのかも。竹竿には悪いのだけれど、竹竿の虐待検査となった。これだけ重いラインを風の中で振り回してもバンブーフェルールは破断することがなかった。


腕や肩が痛くなり、手もパンパンに浮腫む。身体のあちこちが痛むなか、今回の釣りを思い出しながら、すぐにでもまた釣りに行きたくなる。竿を作りたくなる。フライを巻きたくなる。心から楽しめた釣り旅だった。


2024年4月3日水曜日

ローウォーター

 最初に来たのは何年前だったろうか。初めての本流、初めてのダブルハンド。群れているアメマス。スイングでの釣り。人も多かったけど魚も多かった。オーバーヘッドの釣りのため河川林が鬱陶しかったけれど、その分町中にも関わらず自然の中で釣りをしている雰囲気がたまらなかった。増水や濁りがなければ行くと必ず釣れる毎年通う川だった。

ある年河川林がほとんどなくなった。隠れていたポイントが現れたりバックスペースが取りやすくなったものの、あの雰囲気がなくなってしまいなんだか悲しくなった。そして魚も急に薄くなったような気がした。

何度か通っても中々アメマスに会えなくなった。今年こそはと通うものの、釣れないものだから回数も減ってしまった。それでも来てしまう。さて今年はどうだろうか。

今年は3月に入って増水がほとんどない。もう末だというのにローウォーターの水位。これはかなり珍しい。いつも増水していると怖くて踏み出せなかった一歩が行ける。どこがブレイクラインかわかる。これは増水したときにも役立つだろう。せっかくなのであちこちまわってみる。

風はあまりない。寒さもほどほど。スプライスドジョイントにを振り回すテストには中々の条件である。


河川林も少しずつ戻ってきただろうか。ようやく人工物が隠れ始めている気がした。


もじりや魚の雰囲気は感じられない。全体トロンと平面な中、ブレイクラインを探しつつ、対岸にキャスト、じっとスイングを待っている間にモゾッときた。よく育った太いアメマス。
竿の弾力をフルに活かし、ジワジワと糸を巻き取る。強引な寄せはせず、魚の首振りからサイズを想像してニヤリとする。水面に姿を見せた水玉がアメマスを確信させる。
ようやくこの川で会えた。とても嬉しかった一匹。

翌日はバラシた魚が一度きり。帰りがけ、この時期には上にいないだろうと思いつつも、宿屋の主人の話を参考にしながら入ってみたポイント。ここでも会えたのは本当にラッキーだと思う。この時期この場所で何年も会いたかった魚に会えるということ。



バンブーロッドでお気に入りのリール。明るい天気と透明な水色から透明感を感じさせるフライセレクト。すべてはまった満足感。

今年の釣りがようやくスタートした。









2024年3月6日水曜日

フェルール

 キャスト中に竿が折れる。この喪失感はなんともいえない。

竹竿だから、とは言い訳と思いつつも、フェルール周りに集中して生じる。

主にカーボンパイプをフェルールとしているからだろうか。いや、金属のパイプでも同様の問題は起きる。その構造としては、丸いパイプをはめるために強い表皮部分を削る。そこに生じる段差が問題のようだ。

スリーピースでバット側は問題ない。一定以上の太さでは大丈夫ということ。折れるのは決まってティップとミドルの接続部分だ。



スカジットラインのような重いライン、ヘビーなシンクティップを抜き上げるとき、きまってミドルに力が集中するのもある。キャスト中にねじりながら負荷がかかるのもミドルセクション。この部分をどうにかできないか。

スペイ、スカジットのダブルハンドロッドを目指している自分としては少しでも改良を進めないと、この先はない。

1つの解決策としてはスプライスドジョイントがある。これは精度良く削るのがなかなか面倒というのもあるが、実際に使うときのテーピングはかなり面倒だし、しまうときも同じ手間がかかる。ただ、安定性は抜群だろう。スペイロッドでこれが普及する理由もよくわかる。



もう1つの解決策は、コンポジットフェルールではなかろうか。竹フェルールという貧弱な響きから敬遠していたが、カーボンとの複合素材の強さは目を見張る物がある。

ガラスやカーボンにエポキシ樹脂を含浸させるのはFRPと同じ理屈だし、熱をかけるのならカーボンロッドのブランクと似た原理となるだろう。

ボブクレイや朝間ロッドさんが取り組まれているようで、今回は朝間ロッドさんが公開されている手法を真似してみた。

精魂込めて仕上げた竹のシャフトを実験に使うのは心苦しい。火にくぐらせたり水につけたり。それでも折れるぐらいなら、少しでも先に進めるのならと、取り組んでみる。



結論、まだキャストもしていないけれど、抜群に強度を感じるフェルールができた。これから組み立て使い倒してみるけれど、今からとても楽しみ。六角形同士のフィット感、適度な硬さの表面、そして段差を設けない竹のシャフトは、間違いない結果となるだろう。



はやく仕事を片付けて、春の釣りへと向かおう。

2023年10月30日月曜日

秋休み

 秋の最盛期に休みが取れる友人達がいつも羨ましかった。祭日絡みで四連休とか。いつも羨ましくおもっていたけれど、ふと自分の週末のシフトをみてたら休めることになっている。急かもしれないけれど、自分も秋休みを取ってみよう。もう興奮しかない。

みんなが働いている金曜日の朝早く現地へに向かうこととする。


この日に雨が降り出すとの予報があった。まだ間に合いそう。釣り下りを急ぐ。


久しぶりのポイントで45cmのアメマスが出てきてくれた。スイング後リトリーブ中にガツンときた。水面をゴボゴボとあらしたので少しだけ慌てた。無事ネットイン、久しぶりのアメマスとの出逢いがたまらなく嬉しかった。ただ、熊が出るとのことで昼間なのに何度も振り返りながらの釣りだった。

その後雨が降ったり放水で増水したりと、釣りにはなりづらい状況。それでも一人焚き火を楽しむ。


早々に釣りを終えてキャンプと焚き火としけこんだのは正解だったかもしれない。


車中泊の夜は長い。夜中ずっと雨を感じていた。案の定というか増水と濁りで目あての本流は釣りにならない。支流で鉢合わせた友人と話ながらふと気づいた。いつものダム湖はどうだろうか。


落ち葉も多くて釣りづらい。それでもティップに入ったヘッドが手元に届きそうなとき。銀色の魚がこたえてくれた。


ヘッドを抜くのに一回、ラインを整えるのにロールキャスト。ようやく三度目でキャストとなる。このリズムをつかんで程なくヒット。やはりリズムは大事だ。

秋の虹鱒に出会うのはなかなか難しい。今年ラストの虹鱒だろう。この44cmの魚との出逢いには感謝しかなかった。

2023年10月17日火曜日

釣れる釣れない

 10月も半ば、気温は6℃から22℃、水位は68.02、濁度3、晴れ。ようやくきたこの条件。釣れるとしかとしか思えない。


朝一は期待感しかなかった。思ったよりも鮭は少なかったので、新規のポイントに向かうも鮭のスレがかりしかない。

あまり調子が良くないのは、前より人が多いからかもしれない。


3箇所目でフライをひったくるように出た小さなニジマス。


テールのオレンジが効いたのかも。


秋の夜は早い。1630には終了。呆気なくてなんだか物足りない気分になる。


翌朝は七時から。それでも魚の反応は無い。ただし雰囲気だけは満点。


あっという間に11時前となり釣りを終えることになる。釣れないのにまだまだ釣りをしていたい。


鮭のスレがかりでも折れなかった竿、少しだけ曲がったかもしれないけれど、新しいリールとの相性は抜群に感じた。おれた分5cmぐらい短くなった竿は少しだけ強くなって、420grが丁度良い感じ。タイプ4の軽いティップで鮭が産卵している岸際でたまに根がかる程度だった。

大物との出会いはまた次に残しておこう。