2024年5月20日月曜日

春の終わり

 島に渡り毎年の場所へ。ワカサギは群れているだろうか。

例年より雪解けが早く、気温が高めに推移したせいなのか、すでにワカサギは岸寄りしているとのことだった。



細長いシルエットが覗き込んだ岸際に浮かぶ。久しぶりのベイトの群れに心踊らせる。しかし、群になって泳ぐというよりも昼寝しているかのようなリラックス具合だった。このワカサギが群れている前で釣りをするのが魚に出会うための近道かもしれない。

まだ朝早く風が弱い間になんとかバンブーロッドで一匹に出会いたい。そんな願いも虚しく時間ばかりが過ぎていく。



その後昨年良かった切り株際を狙いに彷徨う。そしてノーコンタクト。中々思うようにいかない。ラインが軽いからだろうか。S12に変えると根掛かりが圧倒的に増える。今日二匹のイトウに出会えた友人はダンベルアイが効く、と言っていた。どうやら底を取るのが有効なようだ。

風で岸際に濁りができた中、ワカサギたちが急に群れをつくって怯えたように泳ぎだす。もしかすると捕食する魚から逃げ惑っているのだろうか。良い雰囲気でも釣れない時間がすぎてゆく。諦めかけた夕暮れ時になんとかサクラマスに出会えた。この一匹で満足、と竿を畳んだら、その後に別の友人にもイトウとの出会いがあった。しまった、あともう少し続けていれば。なんともタイミングの合わない日だった。まあ、1年に数回しかない釣りだから、中々呼吸を合わせるのが難しいかもしれない。

その翌週。

今日は風が強くていつもの場所では釣りにならない、という友人たちのアドバイス。渡船の中野さんにお任せして、この風でも釣りになる場所へ渡る。

すでに朝から風が強い。それでもちらつくワカサギたち。大きな群れはない。左回りと右回りで別れて釣りをするも、結果どちらも行き止まりとなって戻ってきた。初めての場所で皆戸惑い気味の様子。

いよいよ風がついてきたので、風裏のところをひとり彷徨う。切り株が突き出ているあたり、なんだか良い雰囲気がする。すると、切り株の水際が不自然に盛り上がった。これはベイトを追いかけるイトウの残影では?



万が一の可能性にかけて切り株の間にラインを通す。すると数回のうちに根掛かり、いや動く根掛かりとなる。首を振る感触は紛れもないイトウのもの。何度も脳内再生したように合わせを入れる。一気に走るということはなかったけれど、相応の重量感を竿に感じつつ、無事ランディングできた。



62cm。サイズからみてまだまだ中学1年生かもしれない。ただ、バンブーロッドでイトウ釣り上げた、と言うには十分な大きさだった。




みなポイント探しに手こずっているだろうからとLINEで情報を送る。程なくやってきた二人の友人にそれぞれイトウとの出会いがあった。正解はこのあたりだったということか。

岸際にはワカサギはいなかった。あとからきた友人によると、朝はこのあたりでワカサギが群れていたとのこと。イトウやアメマスなどの捕食魚がやってきて、物陰にかくれたのかもしれない。



重めのフライをつけた友人は絶好調でコンスタントに魚をかけている。

カウントダウン中に沖でバラしたという、ゆっくりリトリーブする別の友人は、キッチリフライをターンオーバーさせている。

中々イトウには会えない友人のバックハンドキャストは、風の中でも安定したキャストとなっていて勉強になる。

いつも釣り場では一人が多いけれど、春のみんなででかける釣りは、様々な情報交換とあわせてとても勉強になる。自分もターンオーバーをきっちりさせてゆっくりリトリーブさせようか。焦らずカウントダウンも忘れずに。

釣れずに彷徨い歩いたあとの夕暮れ時。カウントダウン中に、モゾッと違和感。突然の重み。首を振りだした。あ、イトウだ!しかし竿に感じた重みは程なく軽くなってしまった。しっかりと合わせをいれればよかった。

後悔先に立たず。そしてこの後悔がまた来年の訪問に向けた動機づけとなる。妄想でつくられた光に透けるボディを持ったフライがイトウに咥えられたというだけで良しとしよう。



釣りの終わりにボンヤリと定位する岸際の一匹のワカサギをみながら春の終わりを想う。過酷な春の大物シーズンの終わり。この1日の終わりに強い日差しに焼けた顔のほてりをかんじつつ、いよいよ初夏の釣りに向かう。


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