2023年4月26日水曜日

満足感

 3週連続の遠出。はたして今週の調子はどうだろうか?


朝は風もなく、釣れてもポツポツ。昼からの風は強まり、その後アベレージは小さいながらもひさひぶりにワンキャストワンフィッシュとなった。

みんなが良いという色ではなかなか釣れず、自分に自信がある色で釣れた。どこかの本で、竿は生きていて、棚に飾っている竿は呪いのように魚が釣れない、という小話をよんだ。もしかしたらフライもそうじゃないだろうか。釣り人の気持ちが乗り移るというのはあるように思う。


 一匹釣れるともっと大きいのが釣れるのでは?この投げ方でよかったので次はこうすればつれるのでは?大きいのをまた釣りたい。

欲にまみれながら釣りたい気持ちばかりが先走る。釣れても釣れても、手を変え品を変えて、永遠の時間を過ごす。以前は一匹の満足行く魚で良かったのに、いつからこんなに釣り続ける人になってしまったのだろう。
川とサカナと竿と一体となった感覚に、不思議な想いを感じながら過ごした週末。



そもそも風のつよいこのフィールドで、シングルやグラス、ましてや竹竿で釣ること自体が無理なんだよ、と友人に言われて、逆にそのこだわりに自信がもてた。今年はこのこだわりを大事にしたい。


2023年4月18日火曜日

竿と風

 ベカン風。南南東でほぼ右手からの強い風。遮るものはなにもない。風と流れがぶつかりできる波、潮の満干で出現と消失を繰り返す湿地の島、ぬかるむ泥底、どれもこの地の釣りの過酷さを後押しする。フライフィッシングは空中に繰り出したラインの重みで距離を稼ぐ。言わずもがな風の影響が大きい。広い川幅の中、流れの部分で筋を成し、その対岸側のカケアガリにいい魚がついている。この地でフライフィッシングをするためには、風速4-5mの右斜め前からの風を切り裂き、魚がいるであろう20m以上先にフライ届ける力のある竿とラインが求められる。



偶然に朝方はほぼ無風だった。先週良かった場所、フライ、そしてバンブーロッドを使って釣りをする。満潮もあり、他には一人。せっかくなので贅沢に距離をとって釣りを始めたが、期待とは逆に釣れない時間が続く。一度休憩に上がる途中、声をかけたら、60アップ他4匹とのこと。どうやら釣る場所を間違ったようだ。

気持ちと場所を切り替えて12ft半のグラファイトに持ち替える。420grの前半がインターボディのスカジットライン。今日は風もなく、バンブースイッチロッドでも十分飛んでいると思っていたが、やはりグラファイトの性能には勝てない。明らかにバンブーより4-5m先までラインが塊になって飛んでいく。飛距離だけは快感である。塊というのがポイントで、自分で投げているというよりも放り投げている感触。華奢なバンブーとの明確な差に驚く。竿で稼いだ距離でアメマスたちに一歩近づいたのだろうか。ベイトを追いかけているだろう水鳥たちまでもう少しという位置にキャストすると、鈍重な当たり、あの竿の振幅がやってきた。

自分にとってのメモリアルとなるサイズ。やっぱり飛距離なのだろうか。ここでまたバンブーに持ちかえてみた。違和感しかなく、何て愚鈍なことか。タイミングと力の入れ加減を間違えないようにしなければ、ループをつくることすらおぼつかない。いや、これが楽しみなのだと自分にいいきかせる。自らの選択で、竿任せのキャストから一歩先に進んだのだ。飛距離よりも丁寧にターンオーバーすることを心がけていたら、川の中ほどで白いフライをひったくるようなあたりがあり、突然の疾走がはじまった。程なくそれは60アップのアメマスの尾ビレにかかったスレだということに気がついた。飛距離がそこそこでもかかったこと、そしてこのサイズのスレがかりを寄せられたことに驚く。白いフライにはどうもスレが多い気がする。白魚のベイトを追いかける大きなアメマスは、一度ヒレでベイトを叩いて失神させたあとに捕食するのではないか、と想像してみたりする。

その後アベレージサイズのアメメスを何度かキャッチできた。かけてからのやり取りに躍動感を感じられ、なんとも楽しい。グラファイトだと竿を曲げない回収作業となるサイズでも、しっかりと曲がる。グラファイトは対象魚に対してオーバーサイズなのだろうか。やっぱり竹竿だね、なんておもっていたら、突然ベカン風がふきはじめた。嗚呼。このあとの潮回りが絶妙なのに。これでバンブータイムは終了となる。

グラファイトに持ち替え、過酷なベカン風の中、風を切り裂きフライを届ける。これぐらいの風はオーバーヘッドでも厳しいところ、かねてより同行させていただいた友人の真似をして、普通に釣りをする。スカジットラインとグラファイトの性能がこれほど素晴らしいとは。程なく沖目のスイング中、リトリーブの合間にアメマス達が反応し始めた。そしてついにはデカいサイズの群れもやってきた。本日2匹目のメモリアルに加え、60アップ二匹、以下多数。ツーキャストワンフィッシュ。もしくはツーフィッシュ。ベカン風が気にならなくなるぐらい夢中になって釣りをする。いくら釣っても満足しない。もうこんなチャンスはないかもしれないから。これを味わいたくてここまで来たんだ。このパラダイスに。

長潮で10時すぎから夕方まで下がり続ける潮回り。まだまだ釣れると確信しつつも、次の日は悪天候だったので、3時前、ほどほどでやめることにした。

フィールドにおける竿の性能とは。答えが出ないまま、余韻に浸りながら帰路についた。








2023年4月10日月曜日

首振り

 沖合にめがけてキャストしたラインがスイング中に根掛かりのように止まり、突然の振幅を繰り返す。その首振りで魚と理解し、首を振り続ける時間の長さから大物であることを確信する。グラファイトだとドヨンドヨンと繰り返すとした振幅が、竹竿だと明らかな首振りとなって伝わってくる。やばい。この竿で上げられるだろうか。



金曜日の夜から移動、ようやく着いた穏やかな河口では、アメマスのボイルが静かな川面にひろがっている。風もなく、もらった、と思ってからが長かった。サンドベージュに色づいた川色は、いつものフライへの興味を失わせたのだろうか。昼過ぎに満潮であたりが遠のく前にようやく小さなのが一匹。それでもファーストトラウトに出会えたことが嬉しかった。バットを強くした4本目の竿は、なかなかのキャストフィール。ただ、仕舞支度のときに、ファーストセクションのフェルールに障害があって。諦めて次の日はバットがもっと柔い3本目で過ごすこととする。



いつもだと風がつくフィールドは、日曜日の朝も穏やかなものだった。同行の友人に教えてもらった色、みんなが魚をかけたポイント。すべて譲ってもらって、かけた魚。感謝。優しくゆったりと魚を寄せる。走らないかわりに川の中央でステイする。少しずつラインを巻き取る。あっけなくネットに入るかと思いきや、魚のほうがデカい。やばい。入らない。と思うやいなや、リールのドラグ音を載せて走り出した。何度か繰り返す疾走に、この魚に会いたくてここまできたんだ、どうかバレないで、と心の底から祈る。この竿で上げたい。仕上げるのに半年かかったこの竿は、単なる趣味だけじゃないと証明したい。声にならない祈りのすえにようやくキャッチできたのは大きなアメマスだった。



一日キャストしてみて思ったのは、性能ではグラファイトに大きく劣ること。ハマれば飛ぶけれど、ちょっとコツがいる。バックキャストでティップを上げ気味にして、フォワードでは下げすぎない。ビシッとナローループを飛ばす竿にはそもそもならない。少しでも遠くに飛ばしたい釣り人としては、グラファイトには敵わない。ただ、ちょっとしたコツがハマると嬉しい。胴まで曲がるキャストはピックアップが心地よい。華奢なフィールは竿との一体感を感じさせるのか。明らかに重い竿は両手でもつダブルハンドでは疲れを感じさせない。逆に重さに乗ったラインのキャストが心地よい。なんだか病みつきになってくる。



昼にかけて背後から猛烈な強さの風がつきだした。それでもラインを風に乗せられるし、障害なく釣りになった。年間でもタフコンディションとなるこの河口で、自分にとってのトロフィークラスをあげられたことは、自分にとつての竿作りが結実した瞬間だった。この瞬間を想い続けて削りつづけてきた。あともう少しだけと感じる改良点と、仕上げをもっと丁寧に、なんて、次に作るまだ見ない竿にボンヤリと憧れを抱きながら、友人達との帰路についた。


11ft567 375grF/H/I 10ftint. 325grINT