沖合にめがけてキャストしたラインがスイング中に根掛かりのように止まり、突然の振幅を繰り返す。その首振りで魚と理解し、首を振り続ける時間の長さから大物であることを確信する。グラファイトだとドヨンドヨンと繰り返すとした振幅が、竹竿だと明らかな首振りとなって伝わってくる。やばい。この竿で上げられるだろうか。
金曜日の夜から移動、ようやく着いた穏やかな河口では、アメマスのボイルが静かな川面にひろがっている。風もなく、もらった、と思ってからが長かった。サンドベージュに色づいた川色は、いつものフライへの興味を失わせたのだろうか。昼過ぎに満潮であたりが遠のく前にようやく小さなのが一匹。それでもファーストトラウトに出会えたことが嬉しかった。バットを強くした4本目の竿は、なかなかのキャストフィール。ただ、仕舞支度のときに、ファーストセクションのフェルールに障害があって。諦めて次の日はバットがもっと柔い3本目で過ごすこととする。
いつもだと風がつくフィールドは、日曜日の朝も穏やかなものだった。同行の友人に教えてもらった色、みんなが魚をかけたポイント。すべて譲ってもらって、かけた魚。感謝。優しくゆったりと魚を寄せる。走らないかわりに川の中央でステイする。少しずつラインを巻き取る。あっけなくネットに入るかと思いきや、魚のほうがデカい。やばい。入らない。と思うやいなや、リールのドラグ音を載せて走り出した。何度か繰り返す疾走に、この魚に会いたくてここまできたんだ、どうかバレないで、と心の底から祈る。この竿で上げたい。仕上げるのに半年かかったこの竿は、単なる趣味だけじゃないと証明したい。声にならない祈りのすえにようやくキャッチできたのは大きなアメマスだった。
一日キャストしてみて思ったのは、性能ではグラファイトに大きく劣ること。ハマれば飛ぶけれど、ちょっとコツがいる。バックキャストでティップを上げ気味にして、フォワードでは下げすぎない。ビシッとナローループを飛ばす竿にはそもそもならない。少しでも遠くに飛ばしたい釣り人としては、グラファイトには敵わない。ただ、ちょっとしたコツがハマると嬉しい。胴まで曲がるキャストはピックアップが心地よい。華奢なフィールは竿との一体感を感じさせるのか。明らかに重い竿は両手でもつダブルハンドでは疲れを感じさせない。逆に重さに乗ったラインのキャストが心地よい。なんだか病みつきになってくる。
昼にかけて背後から猛烈な強さの風がつきだした。それでもラインを風に乗せられるし、障害なく釣りになった。年間でもタフコンディションとなるこの河口で、自分にとってのトロフィークラスをあげられたことは、自分にとつての竿作りが結実した瞬間だった。この瞬間を想い続けて削りつづけてきた。あともう少しだけと感じる改良点と、仕上げをもっと丁寧に、なんて、次に作るまだ見ない竿にボンヤリと憧れを抱きながら、友人達との帰路についた。
11ft567 375grF/H/I 10ftint. 325grINT
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